木の住まいのメンテナンス

 

 

 

自分の「景色」をつくってゆく。

長い間持ち歩いて、本当に愛着のわいている小物をお持ちでしょうか。新品の時とは違い、長い間持ち歩いた歴史が刻まれています。最初に傷をつけた時のショックはいつの間にか忘れて、傷があるからこそ自分のものであることを確認できます。

天皇家の別荘とされている桂離宮には、わざと刃物を当てて傷をつけている場所があります。杉でつくられた長押ですが、節のある材を選ぶだけではすみませんでした。上手な左官はきれいに塗りあげた壁では、住まい手が気楽に暮らせないといって、壁の端に最後の仕上げとして自分から傷をつけました。この行為を「景色をつくる」と呼びました。住まいながら傷ついてゆくことは、自分の「景色」をつくってゆくことなのです。

 

木材は色が変わって強くなってゆく。

木材の性質のひとつに、紫外線などの波長の長い光を吸収します。木で包まれたインテリアが、優しく感じるのはこのためかもしれません。紫外線は人の肌も焦がし、物の色も変化させます。

同じことが良く紫外線を吸収する木材の表面でも起こります。日の光に照らされた木材が、白~灰~黒色と変化してゆきます。いわば長い時間をかけて、表面が炭になっているのです。日本の伝統的な木材加工のひとつに焼き板がありますが、これは人工的に表面を焼いて炭素層をつり、耐久性を高めたものです。木の表面が黒く色が変わるのは、強く長持ちするための準備といえます。

 

木には日本酒で手を入れてゆく。

住宅として使われた木材も、新しい環境の中で変化をしてゆきます。手垢や脂分などによる変色があります。また、しっかり乾燥された集成材でも、表面には細かい毛割れは発生するものです。適度に手入れをしてあげることは、木材を維持するためにも必要なことです。

でも手入れに当たって、どのようなもので行うのか迷うものです。例えばワックスの種類や使い方など。最も簡単なのは、日本酒で拭くとです。安くて一般に手に入る日本酒を、雑巾に含ませて拭いてあげると、べたつくこともありません。ほのかに赤らんで見えるほど、木肌は喜んでくれます。

 

家族みんなで心を込めてゆく。

樹木として自然の中で生長した後、建材となって生まれ変わっても木材は生き続けます。人が住まなくなった家は、まるで人間の息吹を感じているかのように、朽ちるのが早いと言われます。

木が現しになっている家では、使われている木材とのコミュニケーションを楽しんであげてください。手入れは木材との大切な交流のひとときです。そして手入れをしながら、木を愛でている親の姿を見て育った子どもたちは、木の大切さを受け継いでくれるでしょう。住み継ぐための大切な伝承のひとつです。